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 エジプト第2革命の開始

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 エジプト第2革命の開始 

ムルシ打倒へ1千万人のデモ革命を恐れた軍がクーデター

 「人類史上最大の政治行動」

 
 ついにエジプトで労働者階級の空前の決起が始まり、2011年のエジプト革命を継ぐ第2革命への新段階に突入した。
 ムルシ政権成立から1周年を迎えた6月30日、エジプト全土で1千万人を超える労働者階級の巨大なデモが展開された。英BBC放送は、「人類史上最大の政治行動」と報道した。タハリール広場とその周辺は再び100万人の労働者人民で埋まり、大統領宮殿も数十万人の労働者人民に包囲された。アレキサンドリアやスエズ運河地帯の諸都市では労働者が街頭を占拠した。ムルシ政権打倒の声は全国に満ちあふれ、警察は完全に対応不能に陥った。軍も直接弾圧にのりだせない状態に追い込まれた。
 労働者階級の生活はこの1年、ムルシの統治下で改善するどころか、ますます悪化した。首切りや失業は増大し、物価は上昇し、貧富の格差は拡大するばかりだった。ムルシは労働者の生活を改善する措置を何もとらなかったし、政府内に温存された旧ムバラク体制派の官僚たちや資本家たちもムルシ政権の諸経済政策に対する妨害活動を行ったからだ。
 こうした状況にもかかわらず、さらにムルシがIMFからの48億㌦の融資と引き換えに超緊縮政策を導入しようとしたことが、労働者の怒りの炎に油を注いだ。ムルシ政権に対する当然の抗議行動も激しく弾圧され、ストライキは禁止された。ストライキを闘った多くの労組活動家は逮捕され、警察で拷問を受け、軍事法廷に送られた。
 その一方でムルシの出身母体であるムスリム同胞団のメンバーは、中央・地方の行政機関や国営企業などで有利な地位を与えられた。ムスリム同胞団系の資本家もさまざまな便宜を与えられ、巨額の富を蓄積した。
 さらにその上に、軍部と同盟したムルシ政権はアメリカ帝国主義のシリアやイランに対する侵略戦争政策に全面的に協力したばかりか、イスラエル政府との協力を継続して、ガザのパレスチナ人民に敵対する政策を採り続けた。政権の危機突破のための極端な保守的イスラム化政策も労働者人民に押しつけられた。
 労働者階級はこうした現実のもとで1年間生活する中で、もはやムルシを打倒する以外に生きられないことを学んだ。こうして労働者階級は今年最初の5カ月間に5544件ものストライキとデモに立ち上がった。労働者階級は総体としてムルシ政権打倒の闘いに決起し始めたのであり、6月末には第2革命は不可避の情勢に突入した。

(写真 鉄道労働者のストと連帯するエジプト独立労働組合連盟の労働者たち【4月10日 カイロ】)
 
 

 米帝と結託し軍が政治工作

 こうした情勢に驚きあせった米帝とエジプト軍部は、労働者階級によるムルシ政権打倒という第2革命を阻止するためにクーデターに訴えた。軍部は事前に米統合参謀本部や米政府と綿密な計画を練り、十分な国内政治工作を行った上で7月3日、クーデターを行った。とりわけムルシ打倒闘争を組織していた「タマルド(反乱)」という組織の指導部への工作は重要な意味を持った。
 13年4月に反ムルシ署名を集める運動として出発したタマルドは、米帝やエジプトのブルジョアジーと強い関係のあるエルバラダイ(元IAEA事務局長)の救国戦線、イスラム主義政党の「強いエジプト党」、かつてムルシの大統領選出を支持した小ブルインテリゲンチャの組織「4月6日青年運動」、ムバラク時代最後の首相アーメッド・シャフィークを含む旧ムバラク派、さらにはトロツキストの一派である「革命的社会党=RS」などの実に奇怪な寄せ集め集団である。タマルドは2200万筆の反ムルシ署名を集め、ムルシ打倒運動の組織化の先頭に立った。しかしそれは、労働者革命を実現するためではなく、労働者人民のムルシへの怒りを利用して新たなブルジョア支配体制を再建するためであった。
 軍部はクーデターを前にタマルドの承認を取り付け、クーデターをムルシ打倒という「国民的要求」に応えた軍の「民主主義的な」軍事介入に見せかけようとしたのだ。
 他方、タマルドは米帝やEU政府とも密接な連絡を取りながら、軍の力を借りてムルシを打倒し、挙国一致政府を形成することで労働者革命を防止し、資本主義体制下でエジプトの再建と安定を図ろうとした。タマルドはこの一連の過程を「第2革命」と称している。
 このような陰謀にトロツキストのRSが関与したのはなぜか。RSは現在の相争う諸政治勢力のどちらについたら労働者にとって有利になるかとしか問題を立てない。労働者階級自身が権力を掌握するために労働者は今どう闘うべきかという観点が完全に欠落しているのだ。これではブルジョアジーや小ブル急進勢力のしっぽに労働者階級をつなぎ止めることにしかならない。RSのエジプトでの行動は、イギリスのSWP(社会主義労働者党=トニー・クリフ派)やアメリカのISO(国際社会主義者組織)などのトロツキストの大組織の支持を得ており、これらのトロツキスト組織の立場も徹底的に批判しなければならない。
 

 

 暫定内閣はブルジョア内閣

 クーデターでムルシを逮捕・拘束し、多数のムスリム同胞団幹部を逮捕した軍部は、引き続きムスリム同胞団の弾圧を強化しつつ、自ら権力を掌握することなく、暫定内閣を樹立した。
 暫定大統領にはムバラク体制と深いつながりがあり、腐敗した司法体制を維持し続けてきたアドリ・マンスール最高憲法裁判所長官が正式に就任した。首相には新自由主義者の経済学者で、IMFと連携した緊縮政策を全面的に推進する立場に立っているハゼム・エル・ベブラウィが任命された。外交担当副大統領にはエルバラダイ、財務大臣は世銀所属の研究者であるアーメッド・ジェラルだ。副首相と国防大臣には、クーデターを指導した軍最高司令官のアル・シシ将軍が着任した。これを見ればわかるように、暫定内閣はブルジョアジーの内閣以外のなにものでもない。
 その上で、暫定内閣は労働・人的資源担当大臣にエジプト独立労組連盟の委員長を任命し、同労組の体制内への取り込みを狙っている。同労組はエジプト革命の真っただ中の11年1月30日に結成され、御用労組の支配を突き崩して戦闘的な労働運動を組織して闘い245万人の大組織に発展した組合だ。委員長は組合内の多くの反対を排して委員長を辞任して入閣、暫定内閣のもとでのストライキの抑制を呼び掛けたが、独立労組連盟の現場の活動家や労働者は激しく反対し、闘いの継続を宣言している。
 7月8日には暫定大統領のマンスールが「民主化工程表」を発表した。テクノクラートによる暫定内閣、憲法改正委員会を発足させ、今年末までに国民投票を実施して新憲法を制定、来年初めには議会選挙と大統領選挙を実施し正式な政権を発足させるというものだ。そして暫定大統領は、来年の大統領選挙まで続く議会不在の過渡期において無制限の独裁権力を軍から与えられた。最低6カ月は大統領は全面的な立法権を持ち、国家財政と国家政策を決定できるのだ。暫定内閣はこの独裁的権力を最大限活用して、ムルシ以上に暴力的な新自由主義政策を展開するであろう。
 

 

 反動打ち破り労働者は闘う

 米帝は、暫定内閣を成立させたクーデターを、クーデターと呼ばず、軍による民主主義的な介入であるとした。アメリカには軍事クーデターで成立した政府への援助の停止を規定した法律があるため、エジプトへの援助を継続するためにそういう立場をとっているのだ。米帝はエジプトに対して毎年15億㌦を援助し、そのうち13億㌦が軍に供与されている。この金によって米帝は軍の政治的支配を支えてきたが、クーデター後も援助を継続することを確認している。7月12日のエジプト軍へのF16戦闘機4機の供与決定は、今後も援助を継続するという米帝の意志を示す象徴的行為であった。
 米帝は暫定内閣の安定を図るために、従来から行ってきたタマルドに対する財政支援も継続し、挙国一致体制を強化しようとしている。さらには、米帝は湾岸の反動王政諸国にもエジプト支援を要請した。その結果、サウジアラビアが50億㌦、アラブ首長国連邦が30億㌦、クウェートが40億㌦の支援を表明した。
 米帝は、米帝とイスラエルによる中東支配を支える決定的に重要な役割を果たしているエジプトを労働者革命によって失うことを回避するために、軍部にクーデターを起こさせ、暫定内閣を何が何でも維持しようとしているのである。
 だが、ムバラクやムルシの新自由主義政策によって生きることさえ否定されてきた労働者階級の怒りを、このようなペテン的政策で沈静化させることはできない。暫定内閣は命をつなぐ食料や燃料の補助金(国家予算の25%)を廃止して延命しようとしている。生きるためには資本家や軍部の支配を根底から打倒する労働者革命を実現するしかない。職場で資本と闘い革命を真に指導しうる革命党と闘う労働組合をつくり出すことだ。エジプトの労働者階級は必ず実現し勝利するだろう。
〔丹沢 望〕
 

 
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