「非正規雇用」もストライキができるの?
/早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
2014/3/18 yahooニュース
春闘で大手企業のベア回答が相次ぐ一方、非正規雇用で働く人は1年で133万人増えたとの報道がありました。正社員と非正規は待遇面の格差がしばしば指摘されます。労働者が条件面の改善などを要求する手段の一つにストライキがあります。働かないで抗議することです。非正規雇用でもストライキをすることはできるのでしょうか。
「勤労者」なら誰にでも認められた権利
答えはイエス。もちろんできます。日本国憲法第は28条で「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と労働三権を明記し、ストライキ(「仕事をしない」という手段で抵抗する)は「その他の団体行動をする権利」にあたり「勤労者」であれば正社員であろうと非正規雇用であろうと有しているのです。
とはいえ、いきなり1人でスト突入というのは会社側も意味がわからないし、効果も薄いでしょう。たいていの場合は28条の順に「団結」「団体交渉」を経て不調に終わった際に行います。
団結権とは具体的に労働組合の結成を指します。憲法に基づいて労働組合法という法律が権利を保障します。正社員でも経営陣と1対1で戦うのは不利。何しろ給料をもらっているという前提があるので。そこで労働者が集う組合で対抗します。経営陣はその結成や活動を妨害してはなりません。
非正規雇用の場合は、自分の務めている会社に組合がなかったり、あっても正社員限定である場合は今は1人でも入れる産業を問わない組合があるので加入するといいでしょう。会社の組合が非正規にも門戸を開いている場合はそちらの方が確実です。
とはいえ、いきなり1人でスト突入というのは会社側も意味がわからないし、効果も薄いでしょう。たいていの場合は28条の順に「団結」「団体交渉」を経て不調に終わった際に行います。
団結権とは具体的に労働組合の結成を指します。憲法に基づいて労働組合法という法律が権利を保障します。正社員でも経営陣と1対1で戦うのは不利。何しろ給料をもらっているという前提があるので。そこで労働者が集う組合で対抗します。経営陣はその結成や活動を妨害してはなりません。
非正規雇用の場合は、自分の務めている会社に組合がなかったり、あっても正社員限定である場合は今は1人でも入れる産業を問わない組合があるので加入するといいでしょう。会社の組合が非正規にも門戸を開いている場合はそちらの方が確実です。
「雇止め」の例で考えてみると…
団結する理由は何らかの労働条件を守ったり、よりよくするのが目的です。非正規雇用に多い「雇止め」を例に考えてみましょう。有期雇用契約が終了した際に「もう君とは契約を更新しない」といわれるケースです。ちなみに契約期間中の中途解約は労働契約法という法律が「やむを得ざる事由があるとき」(重い病気など)しか認めません。したがって一挙に裁判へ持ち込んでも勝てる可能性大なのですが、一般人には大変な労苦がかかるので、やはり組合に駆け込む方が賢明です。
雇止めをやめろ、つまり有期雇用の更新をせよという要求をするのが憲法にある「団体交渉」です。期間満了でサヨナラされるのは当たり前と思っている人も多いでしょう。しかし労働契約法は当たり前のように有期契約を更新し続けて無期雇用と実態が変わらなかったり、当然更新されるものと非正規雇用者が期待する合理的な理由がある場合は雇止めを止められます。団体交渉の場では経営側が「期待する合理的な理由がない」組合側が「ある」でぶつかり合うでしょう。なお経営側は団体交渉を拒否できません。これも労働組合法に定めがあります。
雇止めをやめろ、つまり有期雇用の更新をせよという要求をするのが憲法にある「団体交渉」です。期間満了でサヨナラされるのは当たり前と思っている人も多いでしょう。しかし労働契約法は当たり前のように有期契約を更新し続けて無期雇用と実態が変わらなかったり、当然更新されるものと非正規雇用者が期待する合理的な理由がある場合は雇止めを止められます。団体交渉の場では経営側が「期待する合理的な理由がない」組合側が「ある」でぶつかり合うでしょう。なお経営側は団体交渉を拒否できません。これも労働組合法に定めがあります。
団体交渉、斡旋・調停で折り合えなかったら…
ここで何らかの折り合いがつけばいいのですが平行線をたどった場合は団体交渉を繰り返します。組合側が「こりゃダメだ」と思ったらだいたい都道府県労働委員会へ斡旋や調停などを申請します。労働委員会は組合推薦の労働者委員、経営者推薦の使用者委員および労働者委員と使用者委員の2者が同意して任命される公益委員の3者で構成されます。斡旋でかなりの確率で歩み寄る事例が多いようです。
それでもダメな場合にストライキを打つのが通常です。ストは労働関係調整法に定めがあり、この間も労働委員会が調整を続けて解決に向かおうとします。先に述べた斡旋や調停も労働関係調整法にありようが記載されています。つまりストに突入しても多くは団体交渉を並行して進め、労働委員会が介在します。
それでもダメな場合にストライキを打つのが通常です。ストは労働関係調整法に定めがあり、この間も労働委員会が調整を続けて解決に向かおうとします。先に述べた斡旋や調停も労働関係調整法にありようが記載されています。つまりストに突入しても多くは団体交渉を並行して進め、労働委員会が介在します。
ストライキを打つメリットは
ストを打つ労働者側最大のメリットは、団体交渉のように密室ではなく、公然と反旗を翻して社会にその理不尽を訴えられる点でしょう。マスコミが報道しなくても今はネットで容易に主張を述べられます。ある企業を検索した際に「雇止め不当!○○社は理不尽な決定を今すぐ取り消せ」などという見出しとともに組合員(1人で入れる組合も大勢来てくれます)が本社前で戦っている写真など掲載されたら経営陣もかなりのダメージを受けるでしょう。
「勤労者」であれば誰でもストをする権利はあります。それは憲法が保障した権利で駄々をこねるのとはまったく違います。しかし主張に整合性がなかったり、きちんとした手順を踏まないと「駄々」と思われる危険性があります。ストをしたからクビになることもありません。権利を行使しているだけで、ストを理由に解雇などしたらズバリ違法となります。
「勤労者」であれば誰でもストをする権利はあります。それは憲法が保障した権利で駄々をこねるのとはまったく違います。しかし主張に整合性がなかったり、きちんとした手順を踏まないと「駄々」と思われる危険性があります。ストをしたからクビになることもありません。権利を行使しているだけで、ストを理由に解雇などしたらズバリ違法となります。
ただ非正規が正社員に比べて立場が弱いのも事実。雇止めのケースだと紛争中は給料がもらえないし、職場復帰を訴えているのだから転職もできません。これがサービス残業や著しく悪い労働環境是正のためにストまで打つとなると、それこそ次に雇止めされかねないとの心理的圧力がかかってためらうでしょう。また徹底的に戦っても職場復帰まで勝ち取れるのは今のところ多くなく、金銭解決が目立ちます。長期化すれば1年・2年とかかり、その間の出費もバカになりません。したがって非正規雇用者に労働三権はあるものの実態として空文化しているとみなし、さらなる法改正を求める声もあるのです。
ちなみに公務員にはスト権がありません。最近増加している「非正規公務員」はどうかという難問が残っています。
ちなみに公務員にはスト権がありません。最近増加している「非正規公務員」はどうかという難問が残っています。
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■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】(http://www.wasedajuku.com/)
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全国労働組合交流センター