【クローズアップ現代】
ヘイトスピーチを問う ~戦後70年 いま何が~
『鶴橋虐殺』を叫ぶ映像も・・・
クローズアップ現代 ヘイトスピーチを問う ~戦後70年 いま何が~
特定の人種や民族に対して差別や憎しみをあおるヘイトスピーチ。京都市の朝鮮学校に対して行われた街宣活動について「違法な人種差別にあたる」とする判決が、先月、確定した。去年8月には、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に法規制を勧告するなど、日本がヘイトスピーチとどう向き合っていくのか問われる事態に発展している。番組では、ヨーロッパの法規制をめぐる動きや歴史的な事例なども盛り込みながら、ヘイトスピーチが照射する現代社会の姿を見つめていく。
「韓国人は出て行け。」
今、激しい憎悪の表現が社会に拡散し続けています。
特定の民族や人種への憎悪をあおるヘイトスピーチ。
デモは各地で毎週のように行われています。
特定の民族や人種への憎悪をあおるヘイトスピーチ。
デモは各地で毎週のように行われています。
「朝鮮人は全員死にさらせ。
首をつれ。
焼身自殺しろ。」
首をつれ。
焼身自殺しろ。」
「いつまでも調子に乗っとったら、鶴橋大虐殺を実行しますよ。」
国連は去年(2014年)人種差別に当たるとして日本に規制を急ぐよう勧告しました。
国連の委員
「過激で表現の自由を超えている。」
「過激で表現の自由を超えている。」
国連の委員
「他の国だったら警察が逮捕するはずだ。」
「他の国だったら警察が逮捕するはずだ。」
世界各国にも広がるヘイトスピーチ。
殺人事件にまでエスカレートするケースも出ています。
暴走する言葉の果てには何があるのか。
ヘイトスピーチにどう向き合うべきか考えます。
殺人事件にまでエスカレートするケースも出ています。
暴走する言葉の果てには何があるのか。
ヘイトスピーチにどう向き合うべきか考えます。

広がるヘイトスピーチ 日本社会で何が
去年秋から年末にかけて各地で行われたヘイトスピーチを伴うデモです。
「おまえら朝鮮人は腐れ朝鮮人なんだよ、腐れ朝鮮人。
ゴキブリ、うじ虫、朝鮮人。」
ゴキブリ、うじ虫、朝鮮人。」
「殺せ、殺せ、朝鮮人。
出てけ、出てけ、朝鮮人。」
出てけ、出てけ、朝鮮人。」
こうした右派系市民グループによるデモは年間100件以上。
1万5,000人の会員を抱えるという団体もあります。
彼らは在日韓国・朝鮮人が生活保護の受給などの面で、日本人にはない特権を与えられていると主張。
一方、国はこうした特権はないとしています。
こうした団体の活動が人種差別に当たり違法だと裁判所が判断したケースがあります。
6年前、京都にある朝鮮学校の運営に抗議するとして行われた街宣活動です。
1万5,000人の会員を抱えるという団体もあります。
彼らは在日韓国・朝鮮人が生活保護の受給などの面で、日本人にはない特権を与えられていると主張。
一方、国はこうした特権はないとしています。
こうした団体の活動が人種差別に当たり違法だと裁判所が判断したケースがあります。
6年前、京都にある朝鮮学校の運営に抗議するとして行われた街宣活動です。
「なにが子どもじゃ。
スパイの子どもやないか。」
スパイの子どもやないか。」
児童およそ100人が勉強していた授業中に、1時間近く拡声器を使って主張を続けました。
右派系市民グループ 元幹部
「一般ピープルが出した動画にしたら、すごい(視聴回数=211,326)ですよ。
すごい数ですよ、ほんとに。」
「一般ピープルが出した動画にしたら、すごい(視聴回数=211,326)ですよ。
すごい数ですよ、ほんとに。」
この活動に参加し侮辱罪などで有罪が確定した団体の元幹部です。
職業を転々とする中で、本やインターネットの情報から在日韓国・朝鮮人が得をしていると考えるようになったと言います。
職業を転々とする中で、本やインターネットの情報から在日韓国・朝鮮人が得をしていると考えるようになったと言います。
右派系市民グループ 元幹部
「不公平な取り扱いがなされている。
不条理っていうか、何とも言えない感覚ですね。
ちょっと許せないな、率直に。
不公平。」
「不公平な取り扱いがなされている。
不条理っていうか、何とも言えない感覚ですね。
ちょっと許せないな、率直に。
不公平。」
4年前から活動に参加している会社員は、暴力的な言葉を使うことにこそ意味があると考えています。
団体の幹部の発言を記したメモです。
より過激な言葉を選ぶよう促されたと言います。
団体の幹部の発言を記したメモです。
より過激な言葉を選ぶよう促されたと言います。
右派系市民グループ 会員
「相手の喉元に突撃する。
ストレートに相手の嫌がる抗議をする。
既存の保守ではできなかったことを、この団体がしてるということにすごい魅力を感じました。」
「相手の喉元に突撃する。
ストレートに相手の嫌がる抗議をする。
既存の保守ではできなかったことを、この団体がしてるということにすごい魅力を感じました。」
「相手を傷つけるって感覚は持ってない?」
右派系市民グループ 会員
「もうほぼ持ってないですよね。
もうとんでもない下品な言葉を書き並べてもいい。」
「もうほぼ持ってないですよね。
もうとんでもない下品な言葉を書き並べてもいい。」
こうしたデモの参加者30人以上に聞き取り調査を行ってきた社会学者の樋口直人さんです。
参加者の大半は、一般企業のサラリーマン。
主婦や学生もいました。
韓国など周辺諸国との関係悪化が彼らの心理に大きな影響を与えていると言います。
参加者の大半は、一般企業のサラリーマン。
主婦や学生もいました。
韓国など周辺諸国との関係悪化が彼らの心理に大きな影響を与えていると言います。
徳島大学 樋口直人准教授
「近隣諸国との関係でイライラした人、怒った人たちが調べていくうちに『あっ』て言って在日という敵を発見していくという過程がある。
ありえないような論理を使って、排斥するような動きが出てきたのが、新たな特徴だと思います。」
「近隣諸国との関係でイライラした人、怒った人たちが調べていくうちに『あっ』て言って在日という敵を発見していくという過程がある。
ありえないような論理を使って、排斥するような動きが出てきたのが、新たな特徴だと思います。」
ヘイトスピーチを問う “歴史の教訓”は
今、国連は世界各地に広がるヘイトスピーチに警戒感を強めています。
去年8月、日本政府に対しても法律で規制するよう勧告しました。
人種差別的な団体による暴力の扇動が広がっていると指摘したのです。
去年8月、日本政府に対しても法律で規制するよう勧告しました。
人種差別的な団体による暴力の扇動が広がっていると指摘したのです。
国連人種差別撤廃委員会 クリックリー副委員長
「日本政府は、事の大きさを自覚しなければならない。
ヘイトスピーチが暴力や殺害につながりかねない。」
「日本政府は、事の大きさを自覚しなければならない。
ヘイトスピーチが暴力や殺害につながりかねない。」
国連がヘイトスピーチに厳しい姿勢で臨む背景には、歴史の教訓があると言います。
600万人ともされるナチスによるユダヤ人の虐殺。
それは、言葉による攻撃から始まりました。
ユダヤ人が金融業を支配し富を奪っているとして被害者意識をあおったのです。
ヒトラーの主張はドイツ社会に浸透。
そして、虐殺へとつながっていったのです。
600万人ともされるナチスによるユダヤ人の虐殺。
それは、言葉による攻撃から始まりました。
ユダヤ人が金融業を支配し富を奪っているとして被害者意識をあおったのです。
ヒトラーの主張はドイツ社会に浸透。
そして、虐殺へとつながっていったのです。
ヘイトスピーチ その先に何が…
ヘイトスピーチが暴力にまで及ぶという懸念が現実化した国があります。
日本と同様に6年前、国連から人種差別的な活動への対策を取るよう勧告を受けたギリシャです。
標的になっているのは、アジアや中東からの移民です。
日本と同様に6年前、国連から人種差別的な活動への対策を取るよう勧告を受けたギリシャです。
標的になっているのは、アジアや中東からの移民です。
「祖国のために移民と戦わねばならない。」
しかし去年まで対策が取られず、事態は悪化。
移民への襲撃事件も頻発しました。
一昨年(2013年)には、移民への暴力や差別を批判してきた人気歌手が殺害される事件も発生しました。
移民排斥を訴えるグループは政界へも進出しています。
現在、この政党(『黄金の夜明け』)はギリシャの国会で16議席を占めています。
移民への襲撃事件も頻発しました。
一昨年(2013年)には、移民への暴力や差別を批判してきた人気歌手が殺害される事件も発生しました。
移民排斥を訴えるグループは政界へも進出しています。
現在、この政党(『黄金の夜明け』)はギリシャの国会で16議席を占めています。
政党の幹部
「党のシンボルは、ナチスのかぎ十字に似ていると言われるが別物だ。」
「党のシンボルは、ナチスのかぎ十字に似ていると言われるが別物だ。」
この党の候補者の選挙活動の映像です。
候補者
「あなたはギリシャ人?」
「あなたはギリシャ人?」
男性
「はい、そうです。」
「はい、そうです。」
候補者
「移民に襲われるから気をつけて。」
「移民に襲われるから気をつけて。」
候補者
「おまえはギリシャ人じゃないな、消えうせろ。
移民は地獄へ落ちろ。」
「おまえはギリシャ人じゃないな、消えうせろ。
移民は地獄へ落ちろ。」
移民がギリシャ人の雇用を奪っていると主張し被害者意識をあおることで、支持を拡大させてきました。
政党の幹部
「我々は純粋な存在だ。
過激な表現を使うのは真実を語るためだ。
これからも移民に対しては、極端な手段を用いなければならない。」
「我々は純粋な存在だ。
過激な表現を使うのは真実を語るためだ。
これからも移民に対しては、極端な手段を用いなければならない。」
日本でも収束の兆しが見えないヘイトスピーチ。
その先には、何があるのか。
京都の朝鮮学校に娘が通っていた龍谷大学教授のキム・サンギュンさんです。
事件のあと、学校は移転。
子どもたちは大きな音におびえるなど、今でも心に傷を負っていると言います。
キムさんは、ヘイトスピーチが続く社会に大きな不安を感じています。
その先には、何があるのか。
京都の朝鮮学校に娘が通っていた龍谷大学教授のキム・サンギュンさんです。
事件のあと、学校は移転。
子どもたちは大きな音におびえるなど、今でも心に傷を負っていると言います。
キムさんは、ヘイトスピーチが続く社会に大きな不安を感じています。
龍谷大学教授 キム・サンギュンさん
「彼らのやってることは非常に突拍子もないと思いますけども、その背景にサイレントマジョリティーがいると思いましたね。
自分たちの生存権が侵害される。
もしかしたら何か大変なことに、被害遭うんちゃうかという、そういうふうな危機感なり不安感って非常に強いですね。」
「彼らのやってることは非常に突拍子もないと思いますけども、その背景にサイレントマジョリティーがいると思いましたね。
自分たちの生存権が侵害される。
もしかしたら何か大変なことに、被害遭うんちゃうかという、そういうふうな危機感なり不安感って非常に強いですね。」
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