要するに「すき家」のアルバイトは、労働法の適用を逃れるために法的立場としては下請け業者にされていた、ということだな。
以下詳述
「すき屋」のアルバイトは「業務委託契約」であった!
非正規職のアルバイトであり、もちろん「労働者」としての労働契約下にあるものとばかり思っていました。(私だけの認識不足だといいのですが・・)
以下はゼンショーの驚くべき主張です。
①アルバイトは勤務シフト表を自分たちで作成し、会社の業務指示で業務をしていない。だからこれは請負契約に類似する業務委託契約であって、雇用契約ではない。
②アルバイトの勤務日や時間帯は、アルバイトの自由裁量で会社の指示がない。すべてアルバイトの裁量である。
③請負契約に類似する業務委託契約であり、残業代が発生するという前提を欠いている。
業務委託契約と労働契約のちがいってナニ?
「業務委託契約」と言う契約がある。 企業から一定の業務を委託されて働くことを約束する契約のことである。こう聞くと、「労働契約と一緒じゃない?」と思う人もいるだろう。「働くこと」には変わりないんだから、そう思うのも無理はない。ところが、業務委託契約は労働契約とは契約の性質が異なるものである。そして企業が「業務委託契約」を締結する最大の理由は、労働法の適用から逃れるためである。つまり「労働者性を否定すること」を目的に、業務委託契約を締結したがるのである。
これまでも、そして現在も、業務委託契約を締結して働いている人たちは沢山いる。今月は、業務委託契約と労働契約はいったい、どこが、どのように異なるのか、そして、そのことによってどんなリスクが潜んでいるのか、について書いてみたい。
まずは、労働基準法第 9 条の「労働者の定義」を確認しておこう。9条は次のように労働者の定義を定めている。
「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われる者をいう」。
特に重要なのは 「使用される者」 かどうかであるが、 このことを「使用従属性」という。実際に労働者か否か、という具体的な判断は、個々のケースに応じて、さまざまな判断要素を総合的に考慮するということにならざるをえないが、一定の目安がないわけではない。例えば、これまでの判例では、以下のような基準が用いられている。
・ 業務遂行上の指揮監督がどの程度及んでいるか。
・ 時間的・場所的拘束性がどの程度あるか。
・ 仕事の依頼に対する諾否の自由があるか。
・ 第三者に代行することが可能か。
・ 材料・生産器具などは自分が所有しているか。
具体的にいうと, 工場やオフィスで一定の決まった時間に職場に来て指示を受けながら働いたり、賃金をもらっている人が労働者であるということは、おそらく誰も疑いを持たないだろう。つまり、こうした人たちは, 指揮監督を受けて働いているし, 勤務時間や勤務場所も指定されているし, 仕事の指示を拒否できるわけでもない。
一方、他人の指揮監督を受けず、勤務時間も勤務場所も自分で自由に選択することができる自営業者は労働者ではない。すなわち「使用従属性がない」ということになる。労働者ではないわけだから、当然、労働法の適用は受けない。
前者は労働者として労働法の適用を受け, 労働法で定められている権利や保護を享受できる。例えば、1日8時間を超えて働くと割増賃金を支払われるし, 年次有給休暇を取得できる。また、仕事中にケガをしたり病気になったりすると, 労災補償を受けることができる。さらには、失業したときには雇用保険も受給できる。しかし後者は、これらのすべてがない。このように、同じように「働くこと」を契約内容としているのにもかかわらず、両者の間には、非常に大きな差がある。
これまでに裁判では、自らトラックを所有して物を運搬する運転手、オペラ歌手、NHK の受信料の回収人, フリーランスの記者、クラブのホステス、僧侶、相撲の力士など, さまざまなタイプの労働者性が問題となっている。 労働者性が認められるか否かで法的保護に大きな違いが生じる現状において、労働者性をめぐって紛争が多発しているのはいわば自然な成り行きと言えるかもしれない。一番悪質なのは、実際にはまったく自己の自由な決定のない環境のもとで、形だけ自営業者として業務委託契約を締結することで労働法の潜脱を図ろうとする企業である。こういうパターンで働く人のことを「仮装自営業者」 と呼ぶ。
まさしく仮装自営業者を量産していたのが、日本国内で約2000店舗を構える最大手の牛丼屋「すき屋」を経営する株式会社ゼンショーだ。出来立て熱々の牛丼が、24時間365日、いつでも250円で食べられるのは、消費者にとっては非常に便利だが、そこで働くアルバイト店員は、何時間働いても残業代が一切出なかった。会社側は、「アルバイトとは雇用関係はない、請負契約だから残業代を支払う必要はない。すき家のアルバイト従業員は一人親方としてゼンショーと契約している。」という主張を押し通して、労働組合の団交を拒否してきたのである。ちなみに、すき屋はかつて、深夜営業中に頻繁に強盗に入られることで有名だった。これは人件費を極限まで削るため、深夜1人勤務を強制する営業方針をとっていたことも背景事情としてあったと言われている。
結局、労働委員会では不当労働行為が認定され、さらに時間外割増賃金(残業代)の未払いがあるとして、ゼンショーならびに代表取締役は労働基準法違反で刑事告訴された。現在は8年にも及ぶ長い紛争の末に和解にたどりつき、ようやくノーマルな労使関係の第一歩を踏み出したということである。
現在ゼンショーは、自社のホームページに「労働環境改善に関して会社への提言を行う第三者委員会の設置」をすることを発表している。この内容には不十分な点があるものの、ここまで非常に長期間にわたって、粘り強く声を上げ続けて闘ってきたアルバイト店員と労働組合には心から敬意を表したい。
少し考えてみてほしい。すき家のアルバイト店員が、「指揮命令を受けずに自由に自分自身の裁量で決定でき、時間や場所の拘束もなく」仕事ができると思うだろうか。もしそうだったら、全国のすき家は、地域ごとに店内のデザインやメニュー、価格設定などもバラバラで、バラエティ豊かな店舗になっているはずではないか。しかし実態は、むしろその正反対で、どこの街のどこの店舗に行っても、全く同じ牛丼が同じ値段で食べられる。すき家の店員はまさに悲惨なまでに厳しい時間管理のなかで、きわめて自己決定権の少ないまま、日々仕事に打ち込んできたのだ。もし彼らが自営業者だと言うのならば、誰でも自営業者になれるのではないだろうか。
すき家に限らず、私たちの周りには今でも沢山の「仮装自営業者」がいる。これからも会社は隙あらば労働力を出来る限り安く手に入れようとするだろうが、すき家のアルバイト店員のように、その動きに決して屈してはならない。「仮装自営業者」らは、今こそ団結が必要だ。
以上