日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法案に続いて、“日本列島騒然“とする中で、特定秘密保護法案が強行・成立させられた。
だが、それだけではなかった。
その陰になってしまったが、国民の暮らしや平和にとってきわめて重大な法案が、他にも通されてしまった。あるいは、政府の方針が決められている。
ひとつは、「『原発ゼロ』の見直し」である。
「読売」7日付 「東京」7日付
政府は6日、中期的なエネルギー政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」の原案を経済産業省の有識者会議に示した。その中では民主党政権がかかげた「2030年代に原発をゼロにする」目標を撤回し、原発を「重要なベース電源」として積極的に活用する方針へと転換することを打ち出している。
さらに「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保」すると明記し、建て替えとともに将来の新設、増設に含みを持たせている。再び日本は「原発立国」への道をすすむのだろうか。
2つめは、「『武器輸出三原則』の見直し」である。
「朝日」7日付
安倍政権が5日、武器輸出を原則禁止する武器輸出三原則に代わり、新たな武器輸出管理原則を作ることを決めたと言う。
武器輸出三原則は、非核三原則(核を持たず、作らず、持ち込ませず)と並んで、平和憲法を持つ日本の国是であったが、財界や防衛関連産業、アメリカなどの強い要請のもとで、これまでも次々と抜け穴がつくられ形骸化させられてきたが、今回の見直し方針は、「三原則」を撤廃し、事実上日本が「武器輸出国」の仲間入りをすることになるのだ。
新しい原則が決まれば、輸出の可否は、新設された「国家安全保障会議(日本版NSC)」などでの協議を経て判断されるというが、詳しい内容は「秘密保護法」によって国民の目からは隠されるのだろうか。
イラン・イラク戦争など中東でも、ルワンダなどアフリカなどの内戦においても、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランスなどの大国が裏で武器を輸出し、利益をあげる一方で、紛争をさらに激化させた。武器を輸出する国が、当事者でない場合もあれば、敵対国であったりもする。それが、死の商人の恐ろしいところだ。
日本も、その仲間入りをするのだろうか。
3つ目は、5日に、社会保障制度見直しの手順を定めたプログラム(工程)法が参院で、自民、公明の与党の賛成多数で可決・成立した。
「東京」7日付
同法は自民、公明、民主の「三党合意」に基づいて設置された社会保障制度改革国民会議が8月にまとめた報告書を踏まえた内容となっており、医療、介護、年金、子育てなどの社会保障の各分野で「自立、自助」の名の下で、高齢者でも一定の所得があれば「応分の負担」を求める。
介護保険では、一定以上の所得がある人の利用者負担を1割から2割に引き上げる。要支援者1、2と認定された高齢者向けサービスの担い手は国から地方に移す。特別養護老人ホームの入所は原則として要介護3~5の人に限る。医療では、現在1割に据え置かれている70~74歳の高齢者の医療費の窓口負担を2割に引き上げる。紹介状のない人が大病院を受診する場合に一定の負担を課す。
「東京」7日付
社会保障にかかわっては、6日にの衆院本会議で、生活保護の抑制、引き締め策を盛り込んだ改正生活保護法と、生活困窮者自立支援法が可決・成立した。
内容は、自治体が扶養を断わる扶養義務者に説明を求めたり、扶養義務者の収入や資産状況に関して勤務先や銀行などを調査できるようにする。また、申請手続きも厳格になる。
「水際作戦」として、生活保護を受けるべき人が受けられなくなるのではないかとの懸念がひろがっている。
これらは、憲法25条の生存権を踏みにじるものである。そして、「消費税増税分を年金など社会保障に」との掛け声がやはり“偽装表示”だったことが明らかになったのではないだろうか。
「成長戦略」だと、公共事業はどんどん拡大し、原発再稼動・原発輸出で儲けよう、武器輸出で儲けようと力を入れる一方で、国民の医療や福祉はどんどん削って厳しくしようとしている。
TPP交渉も年内妥結をめざし大詰め。来年4月からは消費税の8%への大増税も待ち構えている。
安倍政権と国民との矛盾はいっそう大きくなることはまちがいない。
そのために、政府や行政の都合の悪いことは全部隠して、政府に盾を突きそうな国民を監視する──それが秘密保護法なのではないか。
今必要なのは秘密「保護」法ではなく、平和と国民の命や暮らしを「保護」する政治だ。
「東京」8日付
