
熱気ある2・15労働者集会
in名古屋を開催!
2月15日、「国鉄分割・民営化から28年 2・15労働者集会in名古屋」をイーブルなごや(女性会館)で開催しました。
最初に主催者から、獄中40年になる無実の星野文昭さんをとり戻そうとのアピールがあり、「ソリダリティ-団結-」を全員で合唱しました。
「許すな!解雇自由 労働者派遣法改悪批判」をテーマに加藤寛崇弁護士の講演(写真上)と労働相談、動労千葉最高裁闘争パンフの学習、「改憲と対決する国鉄闘争」と題した基調提起を三本柱に熱気ある集会として勝ち取りました。
基調提起では、⑴安倍政権の中東侵略戦争への参戦に対し、国鉄闘争を先頭とした階級的労働運動の前進と国際連帯で立ち向かうこと、⑵戦争と民営化、労働運動解体攻撃と立ち向かう国鉄闘争を先頭に、階級的労働運動を確立すること、⑶動労総連合を全国につくり出し、その力で第2の分割・民営化攻撃を粉砕すること、が提起されました。また3月方針として、3・10中部電力抗議申し入れ行動、3・11フクシマ現地闘争、3・15動労水戸支援共闘結成への賛同が訴えられました。
動労千葉最高裁闘争パンフの学習では、現在8万4千筆を超えて集まっている最高裁宛の署名をさらに拡大して10万筆署名を達成しようとのアピールがありました。
労働相談は、東海合同労組の分会から三つ、ス労自主から一つの計四つがありました。集会の最後に、全員で団結ガンバローを行い、動労総連合を東海の地でも作り出す決意を新たにしました。(写真下)
闘う仲間の皆さん!
改憲・中東戦争参戦、労働者階級への解雇・賃下げ、団結破壊に突き進む安倍政権を、国鉄闘争を軸に労働者階級の団結した力で打ち倒しましょう!
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講演のレジメは、「続きを読む」をクリックして下さい。見ることが出来ます。
(W記)
最初に主催者から、獄中40年になる無実の星野文昭さんをとり戻そうとのアピールがあり、「ソリダリティ-団結-」を全員で合唱しました。
「許すな!解雇自由 労働者派遣法改悪批判」をテーマに加藤寛崇弁護士の講演(写真上)と労働相談、動労千葉最高裁闘争パンフの学習、「改憲と対決する国鉄闘争」と題した基調提起を三本柱に熱気ある集会として勝ち取りました。
基調提起では、⑴安倍政権の中東侵略戦争への参戦に対し、国鉄闘争を先頭とした階級的労働運動の前進と国際連帯で立ち向かうこと、⑵戦争と民営化、労働運動解体攻撃と立ち向かう国鉄闘争を先頭に、階級的労働運動を確立すること、⑶動労総連合を全国につくり出し、その力で第2の分割・民営化攻撃を粉砕すること、が提起されました。また3月方針として、3・10中部電力抗議申し入れ行動、3・11フクシマ現地闘争、3・15動労水戸支援共闘結成への賛同が訴えられました。
動労千葉最高裁闘争パンフの学習では、現在8万4千筆を超えて集まっている最高裁宛の署名をさらに拡大して10万筆署名を達成しようとのアピールがありました。
労働相談は、東海合同労組の分会から三つ、ス労自主から一つの計四つがありました。集会の最後に、全員で団結ガンバローを行い、動労総連合を東海の地でも作り出す決意を新たにしました。(写真下)
闘う仲間の皆さん!
改憲・中東戦争参戦、労働者階級への解雇・賃下げ、団結破壊に突き進む安倍政権を、国鉄闘争を軸に労働者階級の団結した力で打ち倒しましょう!

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(W記)
第1 小泉内閣~安倍内閣の司法制度改悪・労働法制改悪
1 小泉内閣下の「司法制度改革審議会意見書」(2001.6.12)
「第1 21世紀の我が国社会の姿」として、
「過度の事前規制・調整型社会から事後監視・救済型社会への転換」
「第2 21世紀の我が国社会において司法に期待される役割」
「行政に対する司法のチェック機能については、これを充実・強化し、国民の権利・自由をより実効的に保障する観点から、行政訴訟制度を見直す必要がある。このことは個別の行政過程への不当な政治的圧力を阻止し、厳正な法律執行を確保しつつ、内閣が戦略性、総合性、機動性をもって内外の諸課題に積極果敢に取り組むという行政府本来の機能を十分に発揮させるためにも重要である。」
「いずれにせよ、21世紀の我が国社会にあっては、司法の役割の重要性が飛躍的に増大する。国民が、容易に自らの権利・利益を確保、実現できるよう、そして、事前規制の廃止・緩和等に伴って、弱い立場の人が不当な不利益を受けることのないよう、国民の間で起きる様々な紛争が公正かつ透明な法的ルールの下で適正かつ迅速に解決される仕組みが整備されなければならない。21世紀社会の司法は、紛争の解決を通じて、予測可能で透明性が高く公正なルールを設定し、ルール違反を的確にチェックするとともに、権利・自由を侵害された者に対し適切かつ迅速な救済をもたらすものでなければならない。このことは、我が国の社会の足腰を鍛え、グローバル化への対応力の強化にも通じよう。」
① 従来の開発主義国家(利益誘導型政治)による国民統合から、司法部による統合・調整を担わせる方向への配置換え。
② 司法部による統合は、新自由主義の理念(私的所有の保証、自由市場における対等な個人による自由競争の保証)に適している。
→ 紛争・対立は、個々人が法廷で解決すべきものと捉えられる。
「4. 労働関係事件への総合的な対応強化」として、
「・労働関係訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、民事裁判の充実・迅速化に関する方策、法曹の専門性を強化するための方策等を実施すべきである。
・労働関係事件に関し、民事調停の特別な類型として、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働調停を導入すべきである。」
→労働審判制度の創設
2 安倍内閣の新自由主義政策の一貫としての労働政策
多国籍企業の競争力強化のための新自由主義改革としての日本型雇用の再編
↓
① 労働力コストの削減
② 大企業への負担軽減
…法人税負担軽減、財政支出削減(社会保障費削減)
③ 大企業のための市場の拡大
…非効率産業の淘汰、医療分野などの市場開放、政府が担っていた部門の民営化
⑴ 規制改革実施計画(平成25年6月14日、平成26年6月24日閣議決定)の「雇用分野」で掲げられた政策
① 「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備」
② 「企画業務型裁量労働制やフレックスタイム制等労働時間法制の見直し」
③ 「労働者派遣制度の見直し」
④ 「有料職業紹介事業等の規制の見直し」
⑤ 「労使双方が納得する雇用終了の在り方」
⑵ 複数の司令塔の設立
・経済財政諮問会議
・産業競争力会議
・国家戦略特別区域諮問会議
いずれも総理が議長となっている。複数の司令塔の、競合と役割分担。
第2 雇用ルールの「見直し」(①⑤、若干④)
1 「ジョブ型正社員」「限定正社員」について
⑴ 政府の狙い
日本の正社員は、……職務、勤務地、労働時間(残業)が限定されていないという傾向が欧米に比べても顕著であり、「無限定」社員となっている。そのため、職務、勤務地、労働時間が特定されている正社員、つまり、「ジョブ型正社員」を増やすことが、正社員一人一人のワークライフバランスや能力を高め、多様な視点を持った労働者が貢献する経営(ダイバーシティ・マネジメント)を促進することとなり、労使双方にとって有益であると考える。これらを実現させるために、正社員改革の第一歩として、ジョブ型正社員に関する雇用ルールの整備を行うべきである。
(規制改革会議第1次答申(2013.6.5))
従来の「正社員」=職務・勤務地・労働時間が無限定という前提
→職務等を限定した「ジョブ型正社員」(「限定正社員」)を設けて、「多様な正社員」を普及する。
→限定正社員については、従来の正社員と異なる解雇ルールを整備する。
では、どういった新たな「解雇ルール」を想定しているのか
勤務地限定型、職務限定型正社員については、労使の話し合いを経たうえで、就業規則の解雇事由に「就業の場所及び従事すべき業務が消失したこと」を追加することが想定される。その場合においても、勤務地・職務が消失した際の解雇については、無限定正社員と同様にいわゆる解雇権濫用法理(労働契約法16条参照、特に整理解雇四要件)が適用されることになる。過去の裁判例をみると、勤務地・職務が限定されている点を考慮し、無限定正社員とは異なる判断を行う事例も多くみられる。これまでの裁判例を参照しつつ、判断に関する基本的な考え方を整理し、労使および司法の間のコンセンサスを形成していくことが重要であり、現実的にも有効な紛争解決の指針となるものと考えられる……。なお、こうした基本的な考え方については、最終的には、立法的な手当、解釈通達において明確化することも視野に入れられるべきである。
(規制改革会議雇用ワーキング・グループ報告書(2013.5.29))
→「勤務地・職務の消失」を理由とする解雇の容易化
一般に、整理解雇に当たって要求される解雇回避努力義務(他の勤務地・職務に配転することで解雇を回避することも含む)の否定
⑵ 「ジョブ型正社員」「限定正社員」論の問題点
① 前提となる(従来の)「正社員」認識が一面的。
・そもそも、従来の正社員も「無限定」なわけではない。
・「無限定」の現象があるとしても、それを自明の前提とすべきではない。
→むしろ、経営の専制がまかり通っている状態
② 事業廃止・職務廃止を口実とした安易な解雇を認めるだけ。
③ 「無限定」正社員にとっても、更なる労働強化の口実に。
2 「解雇の金銭解決」化について
⑴ 政府から提唱されている内容
「日本再興戦略」改訂2014」(2014.6.24閣議決定)
予見可能性の高い紛争解決システムの構築
我が国の雇用慣行がとりわけ諸外国から見て不透明であるとの問題の解消や中小企業労働者の保護、さらには対日直接投資の促進に資するよう、予見可能性の高い紛争解決システムの構築を図る。
①「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析
労働紛争解決手段として活用されている「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析・整理については、本年度中に、労働者の雇用上の属性、賃金水準、企業規模などの各要素と解決金額との関係を可能な限り明らかにする。分析結果を踏まえ、活用可能なツールを1年以内に整備する。
②透明で客観的な労働紛争解決システムの構築
主要先進国において判決による金銭救済ができる仕組みが各国の雇用システムの実態に応じて整備されていることを踏まえ、今年度中に「あっせん」等事例の分析とともに諸外国の関係制度・運用に関する調査研究を行い、その結果を踏まえ、透明かつ公正・客観的でグローバルにも通用する紛争解決システム等の在り方について、具体化に向けた議論の場を速やかに立ち上げ、2015年中に幅広く検討を進める。
⑵ 現行の解雇規制制度
① 法の定め
労働契約法16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
17条1項 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
解雇が有効かどうかは、諸事情を総合考慮して、正当な解雇かどうかで判断される(総合考慮の余地なく無効になる場合も有り)。
② 訴訟で解雇無効になった場合
・解雇から判決までの期間の給与の請求が認められる(他で就労して収入を得ていたら、4割までは減額される)。
・判決で「労働者としての地位」が確認されるので、その後も雇用関係は続く。
↓
企業から、
・解雇が有効になるかどうか予想が付きづらい。
・解雇が無効と判断された場合の金銭支払いが大きくなる。
という批判。
⑶ 解雇の金銭解決制度が設けられている国の状況
① ドイツ
訴訟において解雇無効だと裁判所が判断したが、労働関係存続が期待できない場合、労使のいずれかからの申し立てによって、裁判所は、相当額の補償金と引き換えに労働関係解消を命じることができる。
補償金の金額の上限は、通常賃金月額12か月分(労働者が50歳を超えかつ勤続年数15年以上なら15か月分、55歳を超えて勤続年数が20年以上なら18か月分)
訴訟での和解の場合、勤続年数×0.5×月給が定着しているとされる。
(山本陽大「ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究」同志社法学62巻4号)
② グレートブリテン
不公正解雇(能力不足・非違行為・剰員整理など法定の解雇理由に該当しない解雇)について、雇用審判所に対し救済申し立てをした場合、第一次的には復職又は再雇用の命令をするが、労働者が希望せず又はそれが実行不可能と判断するときは、補償金の裁定がなされる。補償金は、勤続年数×週給額×因数(労働者の年齢により、0.5~1.5)。また、不公正解雇により被った損害補償を目的とする補償裁定も行われ得るが、金額の上限がある。
2007~2008年度で、不公正解雇と認定された3791件中、復職又は再雇用が命じられたのは8件、補償金の裁定がなされたのは2552件。補償金の平均は8058ポンド(約107万円)。
(生田大輔「我が国解雇法制における金銭解決制度導入の可能性」)
③ スペイン
・全ての解雇について、補償金の提供が有効要件。補償金の額は、20日分賃金×勤続年数。
・裁判所において解雇無効と判断されても、使用者は再雇用するか損害賠償の支払いかを選択できる。損害賠償額は、45日分賃金×勤続年数(42か月分賃金額が上限。既払いの上記補償金は控除される。)。
(山本陽大「ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究」同志社法学62巻4号)
↓
・総じて、判決で認められる解決金水準は高くないし、訴訟上の和解ではその水準を下まわる。
・失業保障制度が異なる点に注意。
⑷ 労働審判で先取りされている「解雇の金銭解決」の水準
ア 労働審判制度
2006.4.1から実施。
迅速:申し立ててから40日以内に第1回期日が開かれ、原則3回の期日で終了する。
簡易:原則、第1回期日までに主張・証拠は出し尽くす。第1回期日で、審判委員会が双方から事情聴取。それで、解決案を提示する。
イ 解雇事件の解決水準
図表2は略
2010年7月12日~11月11日の間に終了した労働審判事件当事者494名からの調査(『労働審判制度の利用者調査』105頁)
⑸ 「雇用維持型」から「労働移動支援型」への転換の一貫であること
「日本再興戦略」(2013.6.24閣議決定)
新陳代謝を加速させ、新たな成長分野での雇用機会の拡大を図る中で、成熟分野から成長分野への失業なき労働移動を進めるため、雇用政策の基本を行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へと大胆に転換する。
〇 「雇用維持」から「労働移動」への予算配分
2013年度予算→2014年度予算
雇用調整助成金 1175億円→545億円
労働移動支援助成金 23億円→330億円
「日本再興戦略」では、「雇用調整助成金から労働移動支援助成金に大胆に資金をシフトさせることにより、2015年度までに予算規模を逆転させる。」とする。
*「労働移動支援助成金」
・労働者の再就職支援を民間の職業紹介事業者に委託することで、企業が助成金を得られる。
・転職支援会社に、職業訓練等で助成金が支給される。(職業紹介等の民営化)
〇 「移動」した先の仕事はどういうものか
・増加した非正規雇用
図表は略
・半失業労働者(不完全就業)の増加
⑹ 結論―解雇の金銭解決化がもたらすもの
・解雇の容易化、解決水準の低額化
・「労働移動」の促進(これに伴う人材ビジネスの儲け確保)
・「移動」した結果の、労働条件低下
第3 労働者派遣制度の見直し(③について)
1 現行の労働者派遣法:問題点
図表は略
① 労働者を使う事業主(派遣先)が雇用主としての責任を負わない部分がある。
② 派遣先にとって必要なくなれば、いつでも労働者の使用を停止できる。
…派遣先・派遣元の労働者派遣契約には、途中で解除することの法的規制はない。
→派遣先が労働者派遣契約を解除することが、労働者にとって、派遣元からの解雇・雇止めにつながる。
③ 派遣元会社による中間搾取。
…派遣先が派遣元に支払う派遣料から、派遣元の利益も引かれて派遣労働者に給与が支払われる。マージン率は約30%(ただし、社会保険料等の分もある。)
④ 派遣労働者を使用することで、正規雇用が減少するおそれがある。
…法の建前として、労働者派遣は、あくまでも「臨時的・一時的」な労働力確保のためとなってはいる。
原則1年・最長3年(専門26業務の場合)を超えて、同一業務に派遣労働者を派遣してはならない(超える場合には、派遣先が直接雇用をしなければならない)とされている。
*違反の罰則はないし、直接雇用義務も私法上の義務ではないとされている。
*現実には、3年を超えている例も稀ではない。
2 2014年に国会提出された労働者派遣法改悪案の問題点
⑴ 派遣期間の制限を撤廃・大幅緩和、常用雇用代替禁止という原則自体の撤廃
① 派遣元で無期雇用されている派遣労働者→一切の期間制限はなくなる。
② 派遣元で有期雇用されている派遣労働者→3年以上同一事業所に派遣してはならないとしつつ、派遣先事業所の過半数で組織する労働組合(ない場合には労働者の過半数を代表する者)から「意見を聴取」すれば、何度でも延長できる(ただし、同一の「組織」(「課」レベル)での継続はできない。)。
③ 専門26業務の区別は完全撤廃
・派遣労働者を永続的に使用することが可能になる。
・派遣労働者の「限定正社員」は、労働者派遣契約の解除が解雇に直結するおそれ。
⑵ 「労働移動型」への転換のもと、派遣会社がハローワークの代替化
⑵ 民間人材ビジネスの規制改革
第二の柱は、ジョブサーチ・ジョブマッチングの効率化を目指した民間人材ビジネスの規制改革である。「失業なき円滑な労働移動」を実現するには、有料職業紹介事業や労働者派遣制度の在り方・位置づけの根本的な見直しを行うべきである。例えば、労働者派遣制度については、派遣法の根幹にある「常用代替防止(常用雇用に影響を与えることの防止)」という考え方に代わり「派遣労働の濫用防止」の明確化や均衡処遇の推進といった考え方を重視するべきである。また、ハローワークと民間人材ビジネスの補完関係に留意しつつ、両者の連携・協力関係を強化するなかで、有料職業紹介事業が最大限その役割を発揮できるような規制改革を進めていくべきである。
(規制改革会議雇用ワーキグ・グループ報告書(2013.5.29))
⑶ 労働者保護の施策は、実効性のない規定
・派遣元への段階的体系的な教育訓練措置の義務づけ(法案30条の2)、派遣先への配慮義務(40条2項)
・派遣先が労働者の新規募集の際には、派遣労働者を雇い入れるよう努力義務(法案40条の4)、募集の周知(40条の5)
第4 労働時間法制改悪(②について)
1 政府が狙う「新たな労働時間制度」
「日本再興戦略」改訂2014」(2014.6.24閣議決定)
○時間ではなく成果で評価される働き方への改革
・時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応えるため、一定の年収要件(例えば少なくとも年収1000万円以上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した「新たな労働時間制度」を創設することとし、労働政策審議会で検討し、結論を得た上で、次期通常国会を目途に所要の法的措置を講ずる。
厚生労働省労働政策審議会 (労働条件分科会)報告書案(2015.2.6)
「平成28年4月の施行に向けて、通常国会における労働基準法等の改正をはじめ所要の措置を講ずることが適当」として、その1つとして、
「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した新たな労働時間制度の選択肢」
労働基準法に定める時間外労働による割増賃金(残業代)が生じない「労働時間制度」の創設。
2 どういう労働者が対象となるのか?
「高度の専門的知識等を要する」とともに「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」といった対象業務とするに適切な性質を法定した上で、具体的には省令で規定することが適当である。
また、対象労働者の年収について、「1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る」といったことを法定した上で、具体的な年収額については、労働基準法第14条に基づく告示の内容(1075万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である。
(厚生労働省労働政策審議会 (労働条件分科会)報告書案(2015.2.6))
・「年収1075万円以上の労働者」が対象になると法律で決めるわけではない。
・省令(厚生労働大臣の命令)で定めることになれば、後から容易に変更可能。
3 「成果で評価される」のか?
・法律で定めるのは、労働基準法の規制の適用を除外するだけ。
・そもそも、現行法でも「時間ではなく成果で評価」することは可能(最低賃金を下まわることはできないが)。
・成果を基準に賃金を計算する制度の方が、労働時間を規制すべき必要が高い(成果を挙げるために、働きすぎる傾向が生じるから。)。
1 小泉内閣下の「司法制度改革審議会意見書」(2001.6.12)
「第1 21世紀の我が国社会の姿」として、
「過度の事前規制・調整型社会から事後監視・救済型社会への転換」
「第2 21世紀の我が国社会において司法に期待される役割」
「行政に対する司法のチェック機能については、これを充実・強化し、国民の権利・自由をより実効的に保障する観点から、行政訴訟制度を見直す必要がある。このことは個別の行政過程への不当な政治的圧力を阻止し、厳正な法律執行を確保しつつ、内閣が戦略性、総合性、機動性をもって内外の諸課題に積極果敢に取り組むという行政府本来の機能を十分に発揮させるためにも重要である。」
「いずれにせよ、21世紀の我が国社会にあっては、司法の役割の重要性が飛躍的に増大する。国民が、容易に自らの権利・利益を確保、実現できるよう、そして、事前規制の廃止・緩和等に伴って、弱い立場の人が不当な不利益を受けることのないよう、国民の間で起きる様々な紛争が公正かつ透明な法的ルールの下で適正かつ迅速に解決される仕組みが整備されなければならない。21世紀社会の司法は、紛争の解決を通じて、予測可能で透明性が高く公正なルールを設定し、ルール違反を的確にチェックするとともに、権利・自由を侵害された者に対し適切かつ迅速な救済をもたらすものでなければならない。このことは、我が国の社会の足腰を鍛え、グローバル化への対応力の強化にも通じよう。」
① 従来の開発主義国家(利益誘導型政治)による国民統合から、司法部による統合・調整を担わせる方向への配置換え。
② 司法部による統合は、新自由主義の理念(私的所有の保証、自由市場における対等な個人による自由競争の保証)に適している。
→ 紛争・対立は、個々人が法廷で解決すべきものと捉えられる。
「4. 労働関係事件への総合的な対応強化」として、
「・労働関係訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、民事裁判の充実・迅速化に関する方策、法曹の専門性を強化するための方策等を実施すべきである。
・労働関係事件に関し、民事調停の特別な類型として、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働調停を導入すべきである。」
→労働審判制度の創設
2 安倍内閣の新自由主義政策の一貫としての労働政策
多国籍企業の競争力強化のための新自由主義改革としての日本型雇用の再編
↓
① 労働力コストの削減
② 大企業への負担軽減
…法人税負担軽減、財政支出削減(社会保障費削減)
③ 大企業のための市場の拡大
…非効率産業の淘汰、医療分野などの市場開放、政府が担っていた部門の民営化
⑴ 規制改革実施計画(平成25年6月14日、平成26年6月24日閣議決定)の「雇用分野」で掲げられた政策
① 「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備」
② 「企画業務型裁量労働制やフレックスタイム制等労働時間法制の見直し」
③ 「労働者派遣制度の見直し」
④ 「有料職業紹介事業等の規制の見直し」
⑤ 「労使双方が納得する雇用終了の在り方」
⑵ 複数の司令塔の設立
・経済財政諮問会議
・産業競争力会議
・国家戦略特別区域諮問会議
いずれも総理が議長となっている。複数の司令塔の、競合と役割分担。
第2 雇用ルールの「見直し」(①⑤、若干④)
1 「ジョブ型正社員」「限定正社員」について
⑴ 政府の狙い
日本の正社員は、……職務、勤務地、労働時間(残業)が限定されていないという傾向が欧米に比べても顕著であり、「無限定」社員となっている。そのため、職務、勤務地、労働時間が特定されている正社員、つまり、「ジョブ型正社員」を増やすことが、正社員一人一人のワークライフバランスや能力を高め、多様な視点を持った労働者が貢献する経営(ダイバーシティ・マネジメント)を促進することとなり、労使双方にとって有益であると考える。これらを実現させるために、正社員改革の第一歩として、ジョブ型正社員に関する雇用ルールの整備を行うべきである。
(規制改革会議第1次答申(2013.6.5))
従来の「正社員」=職務・勤務地・労働時間が無限定という前提
→職務等を限定した「ジョブ型正社員」(「限定正社員」)を設けて、「多様な正社員」を普及する。
→限定正社員については、従来の正社員と異なる解雇ルールを整備する。
では、どういった新たな「解雇ルール」を想定しているのか
勤務地限定型、職務限定型正社員については、労使の話し合いを経たうえで、就業規則の解雇事由に「就業の場所及び従事すべき業務が消失したこと」を追加することが想定される。その場合においても、勤務地・職務が消失した際の解雇については、無限定正社員と同様にいわゆる解雇権濫用法理(労働契約法16条参照、特に整理解雇四要件)が適用されることになる。過去の裁判例をみると、勤務地・職務が限定されている点を考慮し、無限定正社員とは異なる判断を行う事例も多くみられる。これまでの裁判例を参照しつつ、判断に関する基本的な考え方を整理し、労使および司法の間のコンセンサスを形成していくことが重要であり、現実的にも有効な紛争解決の指針となるものと考えられる……。なお、こうした基本的な考え方については、最終的には、立法的な手当、解釈通達において明確化することも視野に入れられるべきである。
(規制改革会議雇用ワーキング・グループ報告書(2013.5.29))
→「勤務地・職務の消失」を理由とする解雇の容易化
一般に、整理解雇に当たって要求される解雇回避努力義務(他の勤務地・職務に配転することで解雇を回避することも含む)の否定
⑵ 「ジョブ型正社員」「限定正社員」論の問題点
① 前提となる(従来の)「正社員」認識が一面的。
・そもそも、従来の正社員も「無限定」なわけではない。
・「無限定」の現象があるとしても、それを自明の前提とすべきではない。
→むしろ、経営の専制がまかり通っている状態
② 事業廃止・職務廃止を口実とした安易な解雇を認めるだけ。
③ 「無限定」正社員にとっても、更なる労働強化の口実に。
2 「解雇の金銭解決」化について
⑴ 政府から提唱されている内容
「日本再興戦略」改訂2014」(2014.6.24閣議決定)
予見可能性の高い紛争解決システムの構築
我が国の雇用慣行がとりわけ諸外国から見て不透明であるとの問題の解消や中小企業労働者の保護、さらには対日直接投資の促進に資するよう、予見可能性の高い紛争解決システムの構築を図る。
①「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析
労働紛争解決手段として活用されている「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析・整理については、本年度中に、労働者の雇用上の属性、賃金水準、企業規模などの各要素と解決金額との関係を可能な限り明らかにする。分析結果を踏まえ、活用可能なツールを1年以内に整備する。
②透明で客観的な労働紛争解決システムの構築
主要先進国において判決による金銭救済ができる仕組みが各国の雇用システムの実態に応じて整備されていることを踏まえ、今年度中に「あっせん」等事例の分析とともに諸外国の関係制度・運用に関する調査研究を行い、その結果を踏まえ、透明かつ公正・客観的でグローバルにも通用する紛争解決システム等の在り方について、具体化に向けた議論の場を速やかに立ち上げ、2015年中に幅広く検討を進める。
⑵ 現行の解雇規制制度
① 法の定め
労働契約法16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
17条1項 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
解雇が有効かどうかは、諸事情を総合考慮して、正当な解雇かどうかで判断される(総合考慮の余地なく無効になる場合も有り)。
② 訴訟で解雇無効になった場合
・解雇から判決までの期間の給与の請求が認められる(他で就労して収入を得ていたら、4割までは減額される)。
・判決で「労働者としての地位」が確認されるので、その後も雇用関係は続く。
↓
企業から、
・解雇が有効になるかどうか予想が付きづらい。
・解雇が無効と判断された場合の金銭支払いが大きくなる。
という批判。
⑶ 解雇の金銭解決制度が設けられている国の状況
① ドイツ
訴訟において解雇無効だと裁判所が判断したが、労働関係存続が期待できない場合、労使のいずれかからの申し立てによって、裁判所は、相当額の補償金と引き換えに労働関係解消を命じることができる。
補償金の金額の上限は、通常賃金月額12か月分(労働者が50歳を超えかつ勤続年数15年以上なら15か月分、55歳を超えて勤続年数が20年以上なら18か月分)
訴訟での和解の場合、勤続年数×0.5×月給が定着しているとされる。
(山本陽大「ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究」同志社法学62巻4号)
② グレートブリテン
不公正解雇(能力不足・非違行為・剰員整理など法定の解雇理由に該当しない解雇)について、雇用審判所に対し救済申し立てをした場合、第一次的には復職又は再雇用の命令をするが、労働者が希望せず又はそれが実行不可能と判断するときは、補償金の裁定がなされる。補償金は、勤続年数×週給額×因数(労働者の年齢により、0.5~1.5)。また、不公正解雇により被った損害補償を目的とする補償裁定も行われ得るが、金額の上限がある。
2007~2008年度で、不公正解雇と認定された3791件中、復職又は再雇用が命じられたのは8件、補償金の裁定がなされたのは2552件。補償金の平均は8058ポンド(約107万円)。
(生田大輔「我が国解雇法制における金銭解決制度導入の可能性」)
③ スペイン
・全ての解雇について、補償金の提供が有効要件。補償金の額は、20日分賃金×勤続年数。
・裁判所において解雇無効と判断されても、使用者は再雇用するか損害賠償の支払いかを選択できる。損害賠償額は、45日分賃金×勤続年数(42か月分賃金額が上限。既払いの上記補償金は控除される。)。
(山本陽大「ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究」同志社法学62巻4号)
↓
・総じて、判決で認められる解決金水準は高くないし、訴訟上の和解ではその水準を下まわる。
・失業保障制度が異なる点に注意。
⑷ 労働審判で先取りされている「解雇の金銭解決」の水準
ア 労働審判制度
2006.4.1から実施。
迅速:申し立ててから40日以内に第1回期日が開かれ、原則3回の期日で終了する。
簡易:原則、第1回期日までに主張・証拠は出し尽くす。第1回期日で、審判委員会が双方から事情聴取。それで、解決案を提示する。
イ 解雇事件の解決水準
図表2は略
2010年7月12日~11月11日の間に終了した労働審判事件当事者494名からの調査(『労働審判制度の利用者調査』105頁)
⑸ 「雇用維持型」から「労働移動支援型」への転換の一貫であること
「日本再興戦略」(2013.6.24閣議決定)
新陳代謝を加速させ、新たな成長分野での雇用機会の拡大を図る中で、成熟分野から成長分野への失業なき労働移動を進めるため、雇用政策の基本を行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へと大胆に転換する。
〇 「雇用維持」から「労働移動」への予算配分
2013年度予算→2014年度予算
雇用調整助成金 1175億円→545億円
労働移動支援助成金 23億円→330億円
「日本再興戦略」では、「雇用調整助成金から労働移動支援助成金に大胆に資金をシフトさせることにより、2015年度までに予算規模を逆転させる。」とする。
*「労働移動支援助成金」
・労働者の再就職支援を民間の職業紹介事業者に委託することで、企業が助成金を得られる。
・転職支援会社に、職業訓練等で助成金が支給される。(職業紹介等の民営化)
〇 「移動」した先の仕事はどういうものか
・増加した非正規雇用
図表は略
・半失業労働者(不完全就業)の増加
⑹ 結論―解雇の金銭解決化がもたらすもの
・解雇の容易化、解決水準の低額化
・「労働移動」の促進(これに伴う人材ビジネスの儲け確保)
・「移動」した結果の、労働条件低下
第3 労働者派遣制度の見直し(③について)
1 現行の労働者派遣法:問題点
図表は略
① 労働者を使う事業主(派遣先)が雇用主としての責任を負わない部分がある。
② 派遣先にとって必要なくなれば、いつでも労働者の使用を停止できる。
…派遣先・派遣元の労働者派遣契約には、途中で解除することの法的規制はない。
→派遣先が労働者派遣契約を解除することが、労働者にとって、派遣元からの解雇・雇止めにつながる。
③ 派遣元会社による中間搾取。
…派遣先が派遣元に支払う派遣料から、派遣元の利益も引かれて派遣労働者に給与が支払われる。マージン率は約30%(ただし、社会保険料等の分もある。)
④ 派遣労働者を使用することで、正規雇用が減少するおそれがある。
…法の建前として、労働者派遣は、あくまでも「臨時的・一時的」な労働力確保のためとなってはいる。
原則1年・最長3年(専門26業務の場合)を超えて、同一業務に派遣労働者を派遣してはならない(超える場合には、派遣先が直接雇用をしなければならない)とされている。
*違反の罰則はないし、直接雇用義務も私法上の義務ではないとされている。
*現実には、3年を超えている例も稀ではない。
2 2014年に国会提出された労働者派遣法改悪案の問題点
⑴ 派遣期間の制限を撤廃・大幅緩和、常用雇用代替禁止という原則自体の撤廃
① 派遣元で無期雇用されている派遣労働者→一切の期間制限はなくなる。
② 派遣元で有期雇用されている派遣労働者→3年以上同一事業所に派遣してはならないとしつつ、派遣先事業所の過半数で組織する労働組合(ない場合には労働者の過半数を代表する者)から「意見を聴取」すれば、何度でも延長できる(ただし、同一の「組織」(「課」レベル)での継続はできない。)。
③ 専門26業務の区別は完全撤廃
・派遣労働者を永続的に使用することが可能になる。
・派遣労働者の「限定正社員」は、労働者派遣契約の解除が解雇に直結するおそれ。
⑵ 「労働移動型」への転換のもと、派遣会社がハローワークの代替化
⑵ 民間人材ビジネスの規制改革
第二の柱は、ジョブサーチ・ジョブマッチングの効率化を目指した民間人材ビジネスの規制改革である。「失業なき円滑な労働移動」を実現するには、有料職業紹介事業や労働者派遣制度の在り方・位置づけの根本的な見直しを行うべきである。例えば、労働者派遣制度については、派遣法の根幹にある「常用代替防止(常用雇用に影響を与えることの防止)」という考え方に代わり「派遣労働の濫用防止」の明確化や均衡処遇の推進といった考え方を重視するべきである。また、ハローワークと民間人材ビジネスの補完関係に留意しつつ、両者の連携・協力関係を強化するなかで、有料職業紹介事業が最大限その役割を発揮できるような規制改革を進めていくべきである。
(規制改革会議雇用ワーキグ・グループ報告書(2013.5.29))
⑶ 労働者保護の施策は、実効性のない規定
・派遣元への段階的体系的な教育訓練措置の義務づけ(法案30条の2)、派遣先への配慮義務(40条2項)
・派遣先が労働者の新規募集の際には、派遣労働者を雇い入れるよう努力義務(法案40条の4)、募集の周知(40条の5)
第4 労働時間法制改悪(②について)
1 政府が狙う「新たな労働時間制度」
「日本再興戦略」改訂2014」(2014.6.24閣議決定)
○時間ではなく成果で評価される働き方への改革
・時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応えるため、一定の年収要件(例えば少なくとも年収1000万円以上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した「新たな労働時間制度」を創設することとし、労働政策審議会で検討し、結論を得た上で、次期通常国会を目途に所要の法的措置を講ずる。
厚生労働省労働政策審議会 (労働条件分科会)報告書案(2015.2.6)
「平成28年4月の施行に向けて、通常国会における労働基準法等の改正をはじめ所要の措置を講ずることが適当」として、その1つとして、
「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した新たな労働時間制度の選択肢」
労働基準法に定める時間外労働による割増賃金(残業代)が生じない「労働時間制度」の創設。
2 どういう労働者が対象となるのか?
「高度の専門的知識等を要する」とともに「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」といった対象業務とするに適切な性質を法定した上で、具体的には省令で規定することが適当である。
また、対象労働者の年収について、「1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る」といったことを法定した上で、具体的な年収額については、労働基準法第14条に基づく告示の内容(1075万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である。
(厚生労働省労働政策審議会 (労働条件分科会)報告書案(2015.2.6))
・「年収1075万円以上の労働者」が対象になると法律で決めるわけではない。
・省令(厚生労働大臣の命令)で定めることになれば、後から容易に変更可能。
3 「成果で評価される」のか?
・法律で定めるのは、労働基準法の規制の適用を除外するだけ。
・そもそも、現行法でも「時間ではなく成果で評価」することは可能(最低賃金を下まわることはできないが)。
・成果を基準に賃金を計算する制度の方が、労働時間を規制すべき必要が高い(成果を挙げるために、働きすぎる傾向が生じるから。)。