民主労総初の女性事務総長
イ・ヨンジュ事務総長は1月26日、チャムセサンと会ってこれまでの家父長的な事務総長の姿と決別し、 新しい組織運営方式に基盤をおく自分にしかできない事務総長になると宣言した。
労働運動陣営の男性家父長主義は、長い間、労働運動が越えられずにいる部分だった。
男性中心の文化、垂直的な位階秩序、組織の官僚体系は、女性労働者への差別と暴力を生むこともあった。
性暴力など、さまざまな組織対立の問題であらわれた「組織防衛」の思考が進歩性と運動性を傷つけているという指摘だった。
イ事務総長は「朴槿恵(パク・クネ)と対決できる、ゼネストができる機会を与えてくれた組合員たちに感謝する」とし
「組合員がくれた機会と幸運を粗末にしない」と明らかにした。

民主労総初の女性総長の一喝
「家父長制一掃」
[イ・ヨンジュ民主労総事務総長インタビュー]
「4月、先制的ゼネストを作り上げる」
ユン・ジヨン記者 2015.01.27 13:27
民主労総20年で初めて女性労働者が事務総長に就任した。 昨年の民主労総の初の役員直接選挙制の結果だ。
労働運動陣営の男性家父長主義は、長い間、労働運動が越えられずにいる部分だった。 男性中心の文化、垂直的な位階秩序、組織の官僚体系は、女性労働者への差別と暴力を生むこともあった。 新しい想像力と感受性を基礎とした革新的組織運営を要求する声も自然に高まった。 イ・ヨンジュ事務総長は1月26日、チャムセサンと会ってこれまでの家父長的な事務総長の姿と決別し、 新しい組織運営方式に基盤をおく自分にしかできない事務総長になると宣言した。
全教組出身のイ事務総長は2008年の全教組性暴力事件の事件処理過程に言及して涙を流した。 性暴力など、さまざまな組織対立の問題であらわれた「組織防衛」の思考が進歩性と運動性を傷つけているという指摘だった。 また、イ事務総長は「朴槿恵(パク・クネ)と対決できる、ゼネストができる機会を与えてくれた組合員たちに感謝する」とし 「組合員がくれた機会と幸運を粗末にしない」と明らかにした。 以下はイ・ヨンジュ事務総長とのインタビュー内容だ。

▲写真=キム・ヨンウク記者
民主労組運動25年で初の女性事務総長に就任した。どんな意味があると見るか。
間接選挙制ら「女性事務総長」は不可能だった。 間接選挙制は韓国の労働運動内の男性中心性をそのまま表わした。 活動家のほとんどが男性で、男性活動家が好んで推薦する人物も男性でしかなかった。 女性事務総長の当選の背景は直接選挙制だ。 直接選挙制の効果の一つは、従来の男性中心文化を一定部分破壊したことにある。 男性か、女性かより、政治的指向や観点で投票をするようになった。
まだ民主労総は男性中心性の文化から抜け出せないという指摘がある。新しい組織運営の感受性と構想が必要ではないか。
最近の関心分野は協力的な組織運営システムだ。 労働者一人一人を分裂させる資本と政権の統制方式から抜け出すために、労働者たちはどんな組織を持つべきかということだ。 現在、ほとんどの労働組合の組織運営は、政権、資本の組織運営システムと違わない。 われわれは彼らのシステムを批判し、弊害を非難してきた。 だがわれわれの組織は健康なのか。 新自由主義を批判しながら、効率性中心の組織運営という限界から抜け出せずにいる。 少なくとも資本と政権に対抗する労働組合組織は、彼らとは違うという差別性を見せなければならない。 団結と協力、対話という組織運営システムを作っていかなければならない。
私たちが資本と政権に要求するためには、まず私たちから自分たちが指向する運動を実践しなければならない。 システムは小さな努力から作られる。 頭の中では運動、革命を考えていても、自分の労働現場は資本家の運営方式そのままで統制されているのなら、私たちの想像力は作られない。 民主労総が仲間たちに運動的にも幸福になる空間になるべきであり、事務総長はこれを手伝う役割を果たさなければならない。 ここにいる仲間たちの差を尊重し、差別を排撃していくことが事務総長の役割だと考える。 初めての事務総局会議の日、運動の基本の自発性と道徳性で自らすべての勤務を統制してほしいと頼んだ。 事務総長が統制して管理する官僚的な態度は取らないといった。 室ごとに業務形態が違っているので、室単位で自主的な出退勤制を施行することにした。

▲写真=キム・ヨンウク記者
業務を始めて3週間経った。直接実務を担当する責任者としての民主労総の事務総局の姿はどうか。
実は当選以後、多くの人たちが心配していた。 事務総局は運動空間ではなく職場になったという批判だった。 だが私はそれが批判点にはならないと思う。 自分の運動であり、同時に職場ならば良いのではないか。 これは保障すべき領域で対話していくべき問題だ。 事務総局の誰かを排除したり、総局の外に追いやるのではなく、また自分の運動に戻るようにする支援方法についての悩みを原則にした。 民主労総事務総局の構成員とも気詰まりなことはない。 委員長も私も、とても気兼ねなく歩き回るので、強硬派というイメージもずいぶんなくなったようだ。(笑)
「細心で几帳面なスタイル」という評価がある。自分の業務スタイルを説明してほしい
「几帳面」という噂があることは知っている。 会計処理のためだと思う。 他のことは関与しないけれど、会計決済書類は几帳面に見る。 労働組合の運営費は組合費だ。 不正や不正をつかみ出すのではなく、労組の金を使う時の原則を守って行くためだ。 全教組はこの部分に厳格だったので、習慣になった。 違う人たちには、私が「公務員」だからだと冗談を言う。 総務室には1か月だけそうすると話した。 年初に基本とシステムを定着させることで運営できるようになる。
2008年の全教組キム○○性暴力事件の時、民主労総と全教組の事件隠蔽と縮小の議論、事件の処理過程での反女性的問題があった。組織内性暴力の問題についてどんな原則を守って行くのか。
この事件に関して組織は一度も責任を取らなかった。 全教組は明らかに責任を取るべきだった。 一昨年、執行部になった後に被害者治癒支援費の予算を策定して白書を作った。 組織では支援して支持する会が中心になり、全教組の女性委員長も共に活動した。 憂慮もあった。 全教組が組織的に予算を支援して支持をすると、全教組内の政派的な批判と分裂があるのではないかということだった。 その時「そうした批判が来れば、この執行部が甘受しなければならない」と申し上げた。 また2次、3次加害者が集会などの公式イベントに参加してはいけないと考えた。 昨年初め、加害者たちに公式イベントの招待状を送ったり口頭で招待はしないという立場をたてた。
これほど古い事件なのに、いつまで被害者優先原則を掲げて行くのかと嫌がる人々もいた。 だが組織が被害者に対して唯一支援したの昨年と一昨年、たった2年だけだった。 組織が被害者に対する責任を取ったのは、たった2年しかないということだ。 これまで一度も被害者が笑う姿を見たことがなかった。 そのうち、白書が編纂された後に民主労総代議員大会の会場で白書を販売した時、初めて笑った。

▲写真=キム・ヨンウク記者
最大の問題は組織防衛だ。 思考が組織防衛に転換した瞬間、この組織は進歩性と運動性をすべて失う。 もはや存在する理由がなくなる。 こうした事件が二度と起きないように防がなければならないが、もし再発すれば組織防衛ではなく、人間の平等と私たちの運動の指向に合わせて処理しなければならない。 それができなければもう労組は労働組合として存在する必要がない。 すべての問題において、組織防衛の観点ができた瞬間、労働組合運動の精神は失われる。 その部分においては現執行部を信じていい。
上半期の公務員年金改悪と公共部門正常化対策阻止に対し、公共部門労働者ゼネストを掲げた。上半期公共部門ゼネストの計画を教えてほしい。
公務員年金改悪阻止闘争は、公的年金全般の民営化阻止闘争と見なければならない。 公的年金の民営化は国家全体を揺さぶる事案で、社会全体を不幸に追いやる問題だ。 政権は公務員を敵に回して、公的年金の民営化を試みている。 公的年金の民営化はすべての民営化の終わりだ。 ブレーキをかけなければならない。 私たちが掲げているのは、1月~2月に希望連帯労組を中心とする非正規職闘争と、 3月~4月の公務員年金改悪阻止闘争だ。
現在、時期的に闘争事案がずっと続いている。 4月には対国会闘争、4月末は金属労組ストライキ、6月~7月は賃団闘、6月末に社内下請全面ストライキなど、 1年間、各産別と地域の懸案が散らばっている。 どの時期をとってもゼネストは不可能だ。 これまでの執行部もゼネストの意志がなかったわけではない。 出来なかったのだ。 時期の不一致と散発的な議題で10年間、力強い闘争ができなかった。 死んだ者を抱いて泣いても何の意味もない。 われわれは政権と資本が決めれば、何日かあとに愚痴るように集会をする。 だが何の問題も解決しない。
今回のゼネストは、資本と政権が起こした問題を後始末する闘争ではなく、まずわれわれが宣言して警告する先制ストライキだ。 状況がすべて終わった後、11月にすべての事案をまとめるような闘争ではない。 4月に先制的、攻撃的ゼネストをする。 人間より利益を追求する浅薄な資本主義により発生した昨年4月のセウォル号惨事の時期に、労働者の名で全面的な反撃を始める。
現在までのゼネストの準備状況を聞きたい。
いくつかの産別、地域本部長と会って意見を打診している。 民主労総が掲げた議題が目の前の懸案と関係がなくても、共にすると宣言する人もいる。 現場ではこの2年間、社会がここまできたのに、なぜ私は何もしなかったのか、なぜ各個戦で戦わなければならないかという悩みが多い。 散らばった闘争ではなく、中央で単一の声をあげる闘争を望んでいる。 まだ、ゼネストは成功するかという質問をよく聞くが、そんな質問をする時はもう過ぎた。 ゼネストは昨年の選挙での組合員の命令だ。 これ以上、遅らせる必要はない。 ゼネスト執行部は組合員が選択した。 ゼネストをできるだけ早いうちに組織して実現する任務を持っているだけだ。
組織することができる限りの労働者を組織する。 2月12日の代議員大会の後で始めては遅い。 すぐ来週から委員長と役員が各産別と地域本部を訪問する予定だ。 地域本部ごとに代議員懇談会を開き、1次的な学習と事前討論をした後、代議員大会で力強くゼネストを宣言する計画だ。 代議員大会の後には中央に「ゼネスト勝利実践団」を、産別と地域本部には「現場ゼネスト勝利実践団」組織することにする。 この人たちがみんな事業場を訪問して、教育宣伝を担当して、ストライキ隊伍への参加の勧誘とゼネスト基金1人当り1万ウォン組織といった活動をしていきたい。
最近、金属労組-現代車支部-現代車非正規支会の間で組織の対立が起きた。民主労総も24日に立場を発表したが、組織対立が起きた時、上級団体はどんな原則と立場を堅持すべきなのか。
これまで産別労組で起きた組織の対立に民主労総が関与した事例はないと理解している。 しかしこれも間接選挙制だったからだと思う。 金属労組に一緒にこの問題を議論しようといった時、果たして民主労総が産別の組織問題に関与してもいいのかという問題提起を聞いた。 間接選挙制ではできないことであったかもしれないが、直接選挙制では金属労組の組合員も私たちに投票をしたわけではないか。 その要求を受け止めなければならないと話した。 関与して指導するのではなく、組織の団結のためにどのようにして問題を解いていくのかという論議の場を共に作るべきだと思う。 金属労組の内部に大きな対立があり、この部分がゼネストに与える影響について悩む人たちも多い。 だが申し上げたように、何かの問題で組織防衛が、あるいは特定事業の利害関係が作動した瞬間、運動の原則が壊れ、運動は元気を失う。 運動の原則をつかまえることが組織を強くする動力だ。
金属労組の件もそのように考える。 今までの歴史と伝統がある金属労組を信じている。 この問題を解決できない組織や活動家とは思わない。 民主労組の立場を堅持していき、十分に協議して解いていけると考える。 民主労総が上級団体として判断して指示をするという観点では、この問題は解決できない。 問題を解決するための協力者の役割を果たす。

▲写真=キム・ヨンウク記者
委員長-事務総長-首席副委員長はみんな大工場の正規職または公共部門の正規職労働者出身だ。非正規職闘争や未組織非正規組織化などの経験と共感が不足しているという限界があるのではないか。
選挙運動の時にも非正規職の仲間を候補にすべきではないかという指摘が多かった。 だがそれ自体が分裂的な思考だと思う。 政権と資本は正規職と非正規職を、公務員と非公務員を分離する政策を使ってきた。 いつのまにか正規職なら非正規職がわからないという認識が生まれた。 だが労働者は分離して存在するのではなく、すべて融合している。 家庭でもお母さんが公務員、お父さんが正規職会社員、息子が非正規職ではないか。 政権は私たちを分裂させ、われわれは政権に洗脳された。 大工場の正規職が現在の民主労総の中心だとすれば、大工場正規職が非正規職撤廃闘争に立ちあがらなければならない。 公務員、公共部門の闘争を成功させるためには、非正規職労働者が団結しなければならない。 また3月~4月以後は、大企業正規職労働者と公共部門労働者が非正規職闘争に連帯しなければならない。 すべての過程は労働者が一つだという事を確認する結果になるだろう。
これと共に今年、民主労総が最大の力を見せられる部分は組織拡大だと思う。 百万人を組織するための組合員加入申請を受け付ける。 民主労総には特別な経路で加入すると考えている人々は多いが、実はいつでも簡単な経路で加入できる。 特定の事業場に含まれていなくても、民主労総を支持し、私が労働者だと考え、ゼネスト隊伍に参加したいすべての人たちがすぐ民主労総に加入できるようにする。 労働組合は市民団体、求職者、元労働者、未来の労働者など、すべての人に開かれていなければならない。 力が集まればどんなことでも可能だ。 韓国社会が労働組合への加入を閉鎖的に防いでいたのも政権と資本の論理だ。 労働組合への加入がどんなに簡単なのかを知らせる。
最後に民主労総組合員たちにひと言。
最近、多くの人たちが祝ってくれて、申し訳ない、苦労するねという憂慮の話をする。 だが私は率直に組合員の仲間たちにとても感謝している。 この時期にこうしてすべての組合員の支持を受けて執行部をすることがができる活動家はそんなにいないと思う。 最近もハン・サンギュン委員長と「私たちはとんでもない幸運を得たようだ」と話したりする。 朴槿恵政権と対決できる機会、ゼネストができる機会、3年という期間に民主労総を韓国社会の中心になる変革勢力にすることができる、とてつもない機会を組合員たちがくれた。 皆さんがくれた機会と幸運をみだりに使わない。 組合員の命令を実現するように最善を尽くす。
翻訳/文責:安田(ゆ)
