政権批判は耳が痛くても、民の声に耳を傾けることこそ政治家の仕事ではないのか。人種差別的な「ヘイトスピーチ」規制に便乗した国会周辺のデモ活動への規制強化は、民主主義を危うくする。
国会周辺のデモに対する規制強化を検討し始めた
のは自民党のプロジェクトチーム(PT)だ。
もともと、ヘイトスピーチ(憎悪表現)への対応を検討するために置かれたが、高市早苗政調
会長は二十八日の初会合で、国会周辺の大音量のデモや街頭宣伝活
動についても「仕事にならない」として、規制強化を検討するよう
求めたのだ。
国会周辺では毎週金曜日、複数の市民グループによる「首都圏反原発連合
」が活動している。原発再稼働や特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認
などへの反対を訴えてきた。
政権側には耳障りだろうが、
デモは有権者にとって意思表示
の重要な手段だ。集会、結社や
言論、出版などの表現の自由は
憲法で認められた国民の権利で
もある。侵すことは断じて許さ
れない。
そもそも国会周辺のデモは「国会議事堂・外国公館等周辺地域の静穏保持
法」や東京都の条例で規制されている。厳重な警備の中でも行われているの
は、法律や条例に違反していないからだろう。
実際、警察庁も自民党に対し、静穏保持法による摘発は年間一件程度と説
明した、という。
そのデモ活動と、国連人権規約委員会が日本政府
に差別をあおる全ての宣伝活動の禁止を勧告したヘ
イトスピーチとを同列で議論することが認められ
るはずがない。
ヘイトスピーチの放置は許されないが、法規制には慎重であるべきだ。治
安維持を名目に、表現の自由など人権が著しく蹂躙(じゅうりん)された歴
史的経緯があるからだ。
自民党の石破茂幹事長はかつて国会周
辺でのデモ活動をテロ行為と同一視する
発言をして陳謝した経緯がある。同党の
憲法改正草案には表現の自由よりも公益
や公の秩序を優先する規定まである。
2014年8月30日 東京新聞
表現の自由に枠をはめたいというの
が自民党の本音なのだろう。在日外国
人の人権を守るという理由で、政権批
判まで封じ込めようとしているのなら
、悪乗りがすぎる。
差別的な言論や表現をなくし、在日
外国人らの人権を守り抜くために、品
位ある国民としての英知を集めたい。
指導者たる者が国家や民族間の対立を
あおる言動を慎むべきことは、言うま
でもない。